歌詞集

2020-05-11 09:00:00

あの人の写真は日ごとに
色あせて古くなるから
都合良く 恋を忘れてたあたしも
たまには 泣きたくなったりするのだ。

かたわらでじゃれてる猫は
きまぐれに あたしと目が合うと
時々は なぐさめるように 笑ったりする

そばにいてください だなんて
そんなわがままは
猫にひっかかれて ひっこめた 手の中
握りつぶして しらんぷりしてたけれど

丸めたままのあたしの背中を照らす
夕暮れの月は はんぶん
宙ぶらりんの想い抱える
あたしの心に 似てた


あの人の行方は日ごとに
たぶんどんどん遠くなるから
都合良く 忘れられているあたしは
相変わらず 手ぶらのまま ここにいるのだ。

かたわらでの猫ときたら
いつだって 大あくびして寝てばかり
やさしい退屈な暮らしは あしたもきっとゆっくり続いてく

もいちどだけ会いたい だなんて
そんなお願いは
猫にひっかかれて ひっこめた 手の中
握りつぶして しらんぷり
してたつもりでいたけれど


丸めたまま背すじぴんと伸ばして
急に猫が歌など唄い出す
いつまでもうつむいてちゃだめだと
まじめな顔であたしを見てた


丸めたままのあたしの背中を照らす
夕暮れの月は はんぶん
いつまでもうつむいてちゃだめだから
猫の真似してあたしも唄ってみる

丸めた背筋ぴんと伸ばしたあたしを照らす
夕月はスポットライト
最後に思い切り涙流したら
もう忘れよう
と、決めた。


作詞:やなせなな
アルバム『あいのうた』(2005年)収録
©Studio Tabby

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2020-05-10 09:00:00

退屈な毎日 ぼんやり過ごしてるわたしは

朝起きて パン食べて
時計がわりのワイドショウ見て
眠い目をこすって 乗ったラッシュの電車で
今日もうつむいて

イヤってわけじゃないけど
たいして好きにもなれない
毎日の仕事 適当にこなして
今日もため息ついて

かなしいことも つらいこともないから
怒らない 泣かない わたしは
笑えない

“だめだよ このままじゃ”
かみさまがそっと耳打ちした
今日は誕生日

今までのすべてを ここから放り出す
空高く飛んでくのは 他の誰かじゃない
ここにいるわたしに まぶしいおひさまの拍手

朝起きて パン食べて
お気に入りの音楽かけて
眠い目をひらいて 乗ったラッシュの電車の
窓から 見える青空

おんなじことのくり返し なんてないから
怒っても 泣いても わたしは
笑えるよ

ほんとの奇跡を
かみさまがそっと耳打ちした
毎日誕生日!

今までのすべてを ここから放り出す

空高く飛んでくのは 他の誰かじゃない
ここにいるわたしに まぶしいおひさまの拍手




作詞:やなせなな
アルバム『あいのうた』(2005年)収録
©Studio Tabby


18111502.jpg

2020-05-09 09:00:00

わたしのことばは 誰にも届かない
泣けど 叫べど 空しく響くだけ

魔法を覚えた 生け贄はわたし
すべて失くしても あなたが欲しかった

水も薬もすべて この体もすべて
あなたが喜ぶなら そばにいてくれるなら

迷い込んだ道は 閉ざされた闇の中
もがきながら探す 見失ったわたしを
壊れそうな月だけが 静かにわたしを照らしていた
“さあ 早くここから もう逃げなさい”と


歪んだ笑顔は 退屈を誘った
あなたは捨ててく 動けないわたしを

窓のないこの部屋に 光は届かない
牢獄に繋がれた 骸となり果てる


腕を伝う 冷たい命の証が
別れを拒んで 切ない叫びを上げる


迷い込んだ道は 閉ざされた闇の中
もがきながら探す 見失ったわたしを
壊れそうな月だけが 静かにわたしを照らしていた
“さあ 早くここから もう逃げなさい”と

迷い込んだ道は 閉ざされた闇の中
もがきながら探す 見失ったわたしを
壊れそうな月だけが まだ静かにわたしを照らしていた
“さあ 早くここから もう逃げなさい”と


作詞:やなせなな
アルバム『あいのうた』(2005年)収録
©Studio Tabby

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2020-05-08 09:00:00

あたしはあなたが大好きで
いつも ここで 待ってる
だからってお願い
お願い
かんたんに安心したりしないでよ

くすんだ銀色の蛇口からあふれ出す
せつないあたしの想い
そばにいるのに忘れられるなんて
笑えないよ こんな気持ちのままじゃ

痛み
こびりついてなかなか落ちない
お鍋の底は深くて 暗い
気づいて欲しいのに ことばにしたら
あたしがいなくなっちゃう
そんな気がするから 怖い

泡立つ涙でごしごし洗う
ひとりぼっちのキッチン


明るい花の絵のお皿には
置き去りのままのあたしの想い
あたためたのに残されてばかり
捨てられないよ こんな気持ちのままじゃ

痛み
こびりついてなかなか落ちない
お鍋の底は深くて 暗い
気づいて欲しいのに ことばにしたら
あたしがいなくなっちゃう
そんな気がするから―

痛み
こびりついてなかなか落ちない
ココロの底は深くて 暗い
気づいて欲しいのに ことばにしたら
あなたもいなくなっちゃう
そんな気がするから 怖い

泡立つ涙でごしごし洗う
ひとりぼっちのキッチン



作詞:やなせなな
アルバム『あいのうた』(2005年)収録
©Studio Tabby

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2020-05-07 09:00:00

なつかしいあの家を
あなたはもう 思い出せない
ただ 裏庭の蜜柑の木を
見上げて ほほ笑むだけ

遠くふるさとから吹く風は
あの日の海の匂いがする
忘れたはずの古い歌を
あなたは突然歌い出した

潔く地図を捨てた人々に
「帰っておいで」と手招きする
風に揺れている緑の葉に
あなたは何を語りかけてるの?

大切なこの家も
あなたはもう 思い出せない
ただ わたしが差し出す蜜柑を
噛み締めて頷くだけ

戸惑いと 深い悲しみの中に
取り残されたわたしを
困った顔で振り返る
けれど あなたはたったひとりで
軽やかに歩き出すために
長い旅の支度を始めた

いとおしいわたしの名も
あなたはもう 思い出せない
このてのひらを握り締めて
やさしくほほ笑むけれど

大切なその全てに
あなたはさよならも告げずに
ただ 刻まれた遠い日々に
静かに瞳を閉じた

なつかしいあの家を 
あなたはもう―

ただ
裏庭の蜜柑の木を見上げて 
ほほ笑むだけ

作詞:やなせなな
アルバム『あいのうた』(2005年)収録
©Studio Tabby

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